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日本と英国を行き来する2人のバイリンガルキッズの母。ロンドンで生まれた子供たちを連れて日本へ。横浜で英語で創作絵本を作るキッズ・クリエイティブ・ライティングの教室を開き、英語の絵本の出版。小学校で不登校になった息子を連れて、またまた英国へ。イギリスの自然と息子のテニス・トーナメントの応援と野菜作りを楽しむ日々を過ごしていましたが、社会人学生として大学に入学。

2014年4月15日火曜日

イギリスの学校 特別支援教育(SEN)と個別教育計画(IEP)

特別支援のミーティング

イギリスの小学校に転校してから初めての担任の先生との保護者面談がありました。
その時に「息子さんは特別教育支援(Special Education Needs:SEN)の生徒ですので、特別支援の教師との保護者面談もあります。」と言われました。

担任の先生の保護者面談と違い、息子を通さず直接学校からの電話で面談日が決まりました。
担任の先生との面談場所はクラスの教室だったのに、今回の面談は校長室で行われました。
挨拶して入ると部屋に待っていた面談担当の先生の人数が3名と知って少しびっくり。

3名の先生の一人は息子をクラスでサポートしてくれる顔見知りの副担任の先生 
もう一人は初めてお会いする先生で息子の個別支援の先生 
最後の一人は息子とも面識がないという教育委員会(Local Education Authority:LEA)の先生でした。

初めてお会いする先生が2名もいて、担任の先生との保護者面談とは違う重々しい雰囲気に少し気が引いた母。

これが、IEPミーティングと呼ばれる特別支援教育(SEN)の児童の為の支援チームのミーティングでした。

このミーティングには必ず児童の保護者も出席することが要求されています。

IEPってなに? 

IEPは、英国では『Individualized Education Plan』と呼ばれる生徒一人ひとりの為に作られる個別の教育計画表です。

IEPは特別教育支援(Special Education Needs、略してSEN)を必要とする個々の児童の為に作られて、その生徒に携わる先生やサポーターの教育指導の目安となります。

息子はSENの生徒として、週2回 英語の個別指導を受けていました。
英語の個別指導は外部の専門の先生が息子専用のIEPに従って行います。 

英語の個別授業以外の学習サポートにおいては学校のSENの資格を持った先生や副担任の先生が、やはりこのIEPに従ってクラスでの授業や少人数の取り出し授業の時に息子の学習サポートを行っていきます。

 突然3人の先生との面談と知って思わず気持ちが引いてしまった母とは反対に、どの先生もとても朗らかでした。

特に教育委員会の先生は「なぜこの人がいるのかしら???」と不思議がる両親に「息子さんとは面識がないが、彼のことはこの2名の先生や学校のSENCO(SENコーディネーター)の先生からよく聞いて知っています。息子さんの学習カリキュラム(IEP)は私が作成しています。」と説明してくれました。

そして、息子のIEPを見せてくれました。
イギリスの教育制度 特別支援 教育計画表(IEP)
イギリスの特別支援の教育計画表(IEP)


 IEPには必ず学習における「ターゲット」「方法・戦略」「結果」が書かれています。通常、3つから4つの短期的目標をあげています。

その他に児童の得意・不得意および不安となる材料、IEPがどのようにコーディネートされているか特別支援およびサポートチーム詳細、達成までの期間、IEPの見直しのタイムライン、学習サポート以外に提供されているサポートが含まれる場合もあります。

息子のIEPにも以下の項目がありました。

  1. Target to be achieved (達成するべきターゲット)
  2.  Achievement Criteria (達成基準)
  3.  Possible resources  (利用できる資料)
  4. Possible Class Strategy (利用できる教室でのストラテジー)
  5. Ideas for support/TA (支援の仕方/ティーチングアシスタント)
  6. Outcomes (結果)


このIEPは決して個別指導および特別支援を行う先生のみが利用するものではなく、担任の先生およびその児童に携わる学校の全ての先生がこのIEPを理解して、必要なフィードバックをSENCOと呼ばれるSENのコーディネートの先生に行います。

そのフィードバックはSENCOの先生を通してIEPを作成する専門家の先生に届き、IEPの見直しが行われます。

 IEPの見直しは、年数回行われて、最低でも6ヶ月に1回は見直しが行われます。

息子のIEPミーティングは2学期のはじめに行われたので、結果は記入されていませんでしたが、見直しは新学年が始まってから10月、12月とすでに2度行われていました。

IEPは英語や算数などの教科の学習だけを目的にされていません。コミニュケーション社会的スキルの分野も含めてターゲットを設定して指導が行われます。

教育委員会の先生も、日本で生活、不登校だったこと、バイリンガルであること等息子に関して幅広く興味を持って保護者の話を聞いてくれました。そして、息子に普段は接していないのに、体育が得意なこと、シャイだけど的確な話し方を誰ともできること等息子のことをよく知っていました。

この日に初めて息子の転校時に行われたアセスメントのテスト用紙も見せてもらいました。

英語が書けないのでほとんど白紙のテスト用紙。
アルファベットどころか数字も書けない部分が多くありました。

「このテストの結果を見て、私達には、息子さんが学習のサポートがどのくらい必要がわかります。」と副担任の先生からのコメント。

不登校時代を彷彿させる真っ白な回答用紙。

 『はい、彼に学習支援が必要なのは、誰が見てもわかるでしょう。』と母は思うとともに、テストの行われた日からわずか数ヶ月で息子の学力が大きく変わったことを感じました。

日本からイギリスの学校へ転校して、英語圏以外の国からの転校生ということで特別支援(SEN)の生徒と認められた息子。

学校へ通えるようになってラッキー。学校で個別指導が受けられてラッキー。教室の授業でもサポートの先生がついてくれてラッキー。なんて思いながらも、どんどん自信をつけて変わっていく息子をみて母は不思議でした。

しかし、彼の変化の裏にはこんなイギリスの学校教育の支援システムがあったのでした。

息子は学校の内外を通して大きな教育支援システムのネットに支えられていたんだと初めて気が付かされたIEPミーティングでした。

ただ、息子がイギリスの小学校ですぐに特別教育支援を受ける事ができたのはラッキーだったのかなと思うこともあります。なぜなら、イギリスの学校でSENの生徒として認めてもらうのに時間がかかったり、十分な適宜な指導が行われていないと感じる児童や保護者もいるからです。

イギリスにSEN専門の弁護士がいたりするのはその実情を裏付けているのではないかと思います。


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参照: 英国 The National Autistic Society http://www.autism.org.uk/, 英国政府https://www.gov.uk/children-with-special-educational-needs/overview,



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2014年4月2日水曜日

イギリスの学校 保護者面談 キーステージと学習習熟度

 保護者面談 ペアレンツ・ミーティング 

不登校生だった上に小学校高学年で海外へ転校と不安がいっぱいありましたが、イギリスの学校でのサポートはいくつもの層に分けて行われて息子も毎日の学校生活に慣れていきました。

イギリスの学校へ転校してわずか2ヶ月で6年生になった息子。
6年生の1学期末に「Parent meeting」と呼ばれる保護者面談がありました。

日本では同級生と一緒に授業を受けれず学習も遅れていたのに、転校したイギリスの小学校では賞状やご褒美ステッカーをいっぱいもらって帰ってくるようになった息子。

保護者面談でも、担任の先生からも「すごい。すごい。」とお褒めの言葉をもらいましたが、さて実際、息子はどのくらい勉強が出来るようになったのか。

 イギリスには義務教育の生徒の学習レベルを表す全国共通の数値があります。 


キーステージと学習習熟度(評価レベル)

小学校1年生(5歳)から中学生卒業(16歳)までの義務教育期間の学習習熟度はキーステージ(Key Stage)と呼ばれる段階で分けられます。


  • キーステージ1 Year 1&2 (5~7歳)
  • キーステージ2  Year 3・4・5・6(8~11歳)
  • キーステージ3  Yea 7・8・9(11~14歳) 
  • キーステージ4  Year 10・11(14~16歳)  

イギリスでは、キーステージ1と2が小学校、キーステージ3と4が中学校となります。

 イギリスの義務教育は日本で言うと幼稚園年長組から高校1年生の1学期までと日本に比べてかなり長い。(4歳児が入れるY1の下のレセプションと呼ばれる学年を持つ学校もあります。)


イギリスの教育省 ナショナルカリキュラム(学習指導要領) キーステージと評価
英国教育省のナショナルカリキュラム キーステージと評価

        
各キーステージの学習内容は、教育省によって決められているナショナルカリキュラム(National Curriculum)と呼ばれる全国共通のカリキュラムに従います。 (日本で言うと学習指導要領のようなものです。)

キーステージごとに「達成目標レベル」が決められています。
この達成目標レベルは『Average level of attainment』と呼ばれ、各段階での平均的な習熟度を表しています。

決してこのレベルに達しなければ不合格ということではなく、あくまでも目安としてキーステージごとの2―3年でどのくらいまで伸びるかを考慮して各生徒の学習計画がたてられていきます。

各キーステージの終了時に全国試験があります。
小学校時のキーステージ2と3の時にSATテストと呼ばれる算数・理科・英語のテストが行われ、キーステージ4の終了時に中学生は通常GCSEと呼ばれるテストを受けます。 

全国試験のない学年時でも、宿題・校内テスト・授業での態度などで先生は生徒の能力をカリキュラムの内容と合わせて数値化していきます。
キーステージ終了時にターゲットのレベルに達成しないようだと判断したら、ターゲットのレベルを引き下げて、習得が早い時はターゲットのレベルを引き上げてと先生方は生徒の学習の目標を調整していきます。

 「1年間で結果が出なくても、数年間の枠で考えていこう。数年間でどのくらいの成長があったかをみていこう。」という教育の姿勢です。

 イギリスの先生と英語の作文の評価

 さて、各教科の息子のレベルを担任の先生から見せてもらいました。

体育は4。ふむふむ。

それ以外は期待してなかったのですが、英語や算数でレベル3と書いてありました。信じられない。

小学校6年の終わりにはレベル4をとれば平均として満足ということになりますが、息子さんの場合、日本からの転校生なのでレベル3の上を目標にしています。」と少し済まなそうに言う先生。

数値で息子の学力が表してもらえるだけでも驚きです。不登校時代の真っ白だった学校の通信簿の欄を思い出します。

「本当にこの数値ですか。」書いてある数字をさして思わず聞いてしまう母でした。

 「この数値は担任教師だけの判断でありません。息子さんの勉強に携わっている副担任、個別指導教師、その他の先生達からのフィードバックによって評価されています。さらに宿題や学校内でのプロジェクトのノートは外部の審査に提出して公平な評価がされます。」 

そして、息子の英語の作文を見せてもらいました。 そこには、数行にもわたってぎっしり手書きの文章が。。。

 『これを我が息子が本当に書いたんですか。』

 でも、よく見るとほとんどの単語のスペルが間違っていて、句読点もなければ、文章の始まりの文字も大文字で始まっていないなど文法も間違いだらけ。

「これを見て私が言えることは。。。」と先生が作文を前に話しだしました。
 「スペルが間違っているし、文法もまだまだ勉強が必要ですね。」と母は思わず続けると。
 「いいえ、これを見て教師として言えることは、息子さんには作文を書く能力があるということです。」
と言い切った担任の先生。

 全く予期もしなかった言葉に『へっ。』と驚いた両親二人。

 「単語のスペルが間違っているのは、これが正しいのです。英語の単語の発音どおりに書いてあります。英語のスペルは発音しない部分も文字があったりして難しいです。習わずに書けるわけがありません。これでいいんです。イギリスで初めてスペルを習う1年生にはこうやって教えています。文法だって習っていけば良くなるのです。それは私達が教えていきます。」

 「でも、文章を書く才能はあるかないかです。息子さんはスペルが間違っていても、文法がめちゃくちゃでも作文を書く才能があります。」

力強い言葉を頂き安心したというよりただただ驚いた両親でしたが、実際は、この半年後に息子が書き終えた作文を読むまで、ただの気休めみたいなものだろうと思っていました。

 『だいたい、この数行の滅茶苦茶の文章を見てどうして作文の才能があると言い切れるのだろう。』

 字を書いたり絵を描いたり創作活動が息子は苦手と思っていた両親。

 字を書こうとすると鉛筆を持ったまま固まっていた息子。アルファベットも満足に書けずにキーボードを叩いて始まった英語の授業。

この両親面談の日からたった数ヶ月で、息子がみんなの前で朗読をしてもらえるような作文を手書きで書けるようになるとは思っていなかったのでした。



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参照: 英国 教育省 UK Department for Education
 https://www.gov.uk/national-curriculum/overview


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